大腿骨顆部骨折

大腿骨顆部骨折

 脛骨と膝関節を構成している大腿骨の遠位部の骨折です。
大腿骨遠位端骨折・大腿骨顆上骨折の傷病名も同義語で,膝近く,太ももの骨折ということです。

 交通事故では,車のバンパーやダッシュボードに大腿骨遠位部を打ちつけることで発症しています。

 大腿骨顆部骨折は,骨折時に骨折片が膝の後方に押しやられ,膝の後方を走行している膝窩動脈損傷を合併することが多いので,注意を要します。
膝関節に近い部分の骨折であり,膝の可動域制限や歩行に支障をきたすなど,後遺障害を残すことが多く,治療の困難な骨折です。

 症状は膝周辺の激痛と腫れや,膝関節の異常可動が認められ,歩行はできません。
単純XP撮影で大腿骨顆部の骨折が認められます。

 従来転位のないものは,徒手整復後大腿から足先までのギプス固定でしたが,膝関節の拘縮をきたす可能性が高いところから,最近は手術による内固定が採用されています。
術後は早期からCPMを用いて,膝部の屈伸運動訓練が開始されます。
大腿骨顆部骨折は,膝窩動脈損傷を伴うことが多く,この場合は損傷より末梢に血液が供給できなくなり,壊死に発展し切断が検討さます。

 交通事故では大腿骨だけの骨折にとどまることなく,同一下肢の大腿骨と脛骨を同時に骨折する,膝関節内骨折となることが多いのです。

①       ②       ③       ④

 4つの図を示しましたが①は関節面の骨折を伴っておらず,早期に内固定を実施すれば,良好な回復が期待できます。
②③④は関節面の骨折を伴っているケースです。中でも④は,腓骨神経の断裂,膝窩動脈損傷を合併することが多く,治療が極めて困難で切断も視野に入れた検討がなされています。

大腿骨顆部骨折における後遺障害のポイント

骨折により,重症度が違います。

  • GradeⅠ 骨折が関節面に達していないもの
  • GradeⅡ 骨折が関節面に達しているが,関節面の1部は骨端と連続しているもの
  • GradeⅢ 関節内骨折が骨端部から分離しているもの

※GradeⅢは骨端部と関節面の単純骨折と骨端部と関節面の粉砕骨折の2つに分類されています。

 この骨折が見逃されることはほぼありません。
そして現在では,大腿骨顆部骨折を保存的に治療することは,極めて異例なこととされており,手術・プレート・スクリューなどによる内固定がなされています。

 もし保存的治療が選択されたときは,長期の入院や膝関節の拘縮,そして遠位部骨片の伸展変形や関節面の不整の後遺障害が予想され,とりわけ高齢者では長期の臥床により,寝たきりとなる危険性があるので,直ちに治療先から転院しなければなりません。

 関節面の骨折を伴わない顆上骨折,GradeⅠであれば,プレートやスクリュー固定とCPMの使用で改善が得られ,後遺障害を残すことなく治癒しています。
関節に近い部位にプレート固定がなされると,関節包や靱帯など,関節周囲の組織が影響を受けて,関節が硬くなる,拘縮の発症が予想されるのですが,これを防止するのがCPMの役目です。

 問題はGradeⅢで開放性粉砕骨折をしているもの,後十字靱帯の剥離骨折や半月板損傷を合併している重篤例です。
専門医の手術であれば,症状固定までに1年間近くを要しますが,不可逆的な損傷では10級11号もあります。しかし大半は12級7号止まりで,改善が得られています。

専門医でないときは,ほぼ確実に,重篤な後遺障害を残します。

  1. MRIで軟骨損傷,半月板損傷や前・後十字靱帯損傷を立証する
  2. 膝関節の不整を3DCTで,明らかにする
  3. 動揺関節を,膝関節のストレスXP撮影で左右差を証明することもない

 後遺障害診断書の作成は被害者の自覚症状を中心になされることが,一般的です。
一方被害者の方も,後遺障害に記載されている内容を理解しないまま,保険会社に渡しています。
この状況では自身のお怪我の症状に見合った後遺障害等級は認定されません。できる限り,受傷から早めに,弁護士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。被害者の方が入院されているのであれば,ご家族の方が専門家相談されてもいいと思います。

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