脛骨顆間隆起骨折
脛骨顆間隆起骨折
右膝関節の正面骨格図 脛骨近位端の後方図
8~12歳の小児に好発,成人でも発生している前十字靭帯付着部の剥離,裂離骨折です。
前十字靱帯損傷と同じですが,交通事故においては,自転車やオートバイの転倒,田んぼや崖下への転落で発生しています。
脛骨の上部で剥離しているのは,前十字靭帯であって,大腿骨ではありません。
脛骨顆間隆起骨折は脛骨の前十字靱帯付着部の裂離骨折であり,骨折は前十字靱帯の牽引力によって生じるもので,損傷のレベルでは,Meyersの分類が最も広く用いられています。
1 2 3 3+
- 1型 骨片が母床からほとんど離れていないもの
- 2型 骨片の前1/3~1/2が浮き上がっているが後方では母床との連続性が保たれているもの
- 3型 骨片全体が母床から完全に遊離しているもの
- 3+型 骨片が後方に反転転位しているもの
骨片の転位の程度により4タイプに分類され,治療法の選択がなされています。
1,2型に対しては保存療法を,2型の内,骨片の存在により完全伸展が不能な例,前方動揺性が強い例と3型については,手術の適応となります。
症状は,膝関節の捻挫,打撲後に,急激に膝関節が腫れて強い痛みを訴え,膝を伸展することができなくなります。診断ではレントゲン検査と注射器による関節液の吸引が行われます。
転位がない軽微なときは,レントゲンで判断できませんが,膝関節内で骨折や靱帯損傷があるときは,吸引した関節液に血液が混入します。
骨折の有無を評価するのにはCT,MRIが有用です。
治療は,整形外科にて整復と固定が行われます。
顆間隆起が完全に剥離して,骨片の固定が不可能なときは,オペによる整復固定が行われますが,そうでないときは,保存的に徒手整復後,膝関節を20°屈曲位に固定します。
保存的療法では,平均すれば,4~5週の固定期間です。
予後は良好で後遺障害を残すことは,ほとんどありません。
しかし発見が遅れたものや,発見後,放置されて陳旧化したものは,膝の可動域制限や関節の安定性を失い動揺関節を生じます。
脛骨顆間隆起骨折における後遺障害のポイント
① 脛骨顆間隆起骨折について
この骨折は発見が遅れたもの,発見するも放置され陳旧化したものが多いです。Lachmanテストを行い,脛骨の前方引き出しのレベルを確認します。
Lachmanテスト
膝を15~20°屈曲させ,前方に引き出します。
前十字靱帯損傷では,脛骨が異常に引き出されます。
動揺性が認められるときは,ストレスXP検査で左右差を立証します。
5~8mmで12級7号,8~10mmで10級11号が認定されています。
10mm以上で8級7号もありますが,脛骨顆間隆起骨折では,ここまでの動揺性があるケースは少ないです。
大多数は,12級7号が認定されます。
ポイントは,ストレスXP撮影による動揺性の立証にあります。
「Lachmanテストにより7mmの動揺性を認める」と,後遺障害診断書に記載されても,それだけでは立証したことにはなりません。
必ず,テロスSE使用によるストレスXP撮影を受け,画像分析により左右差で7mmの動揺性あり,と結論しなければなりません。
なお,動揺性が10mmを超えていれば,前十字靱帯は断裂していると診断されます。
当然ながら,3DCT,MRIで脛骨顆間隆起骨折後の骨癒合レベルの立証も忘れてはなりません。
② 症状固定の時期
多くのケースでは,事故から6か月以上が経過していれば,直ちに,症状固定を決断することになります。
陳旧性の前十字靱帯再建術となると,最低でも,4か月の入院,2か月のリハビリ通院が必要です。
さらに,どの程度まで改善が得られるかはわかりません。
そしてそのような治療費を保険会社が負担する保険会社はほとんどなく,仮に,負担してくれるとしても,さらなる6か月の休業を許してくれる職場はなかなかないと思います。
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