バレ・リュー症候群と耳鳴り,その他の障害について
バレ・リュー症候群と耳鳴り,その他の障害について
本日は,バレ・リュー(バレ・ルー)症候群と排尿障害,嗅覚脱失についてお話しします。
バレ・リューというのは人の名前です。1926年から1928年にかけて,
フランスのバレとリューという人たちが報告した症候群であることからこのように呼ばれています。
眼,耳,心臓,咽頭部(いんとうぶ=のど)など自律神経症状を主体とするものです。
首の損傷によって,自律神経,交換神経節(こうかんしんけいせつ)が
直接的または間接的に刺激を受けることによって発症するものと考えられています。
上の図でいえば,緑色の部分です。交感神経節が損傷することにより,
バレ・リュー症候群を発症します。
頚部交感神経損傷を原因とするバレ・リュー症候群は,不眠が続きます。
頭痛が代表的症状です。
さらに次のような症状があります。
1,全体的な症状
倦怠感(けんたいかん=全身がだるい感じ),
疲労感,熱感(ねつかん=局部に感じる熱っぽいという感じ),脱力感,痺れ
2,眼や耳の症状
眩暈(めまい),耳鳴り,難聴,眼精疲労,
流涙(りゅうるい=涙が出て止まらないような状態),視力調節障害
3,上半身の症状
肩凝り,背痛,腰痛
4,心臓その他の臓器の症状
動悸,息切れ,食欲不振,
胃重感(いじゅうかん=胃もたれや胃が重たくなる感じ),
悪心(おしん=気持ちが悪く吐きそうな感じ),
腹痛,下痢,便秘などの不定愁訴に一気に襲われることがあります。
5,その他
四肢冷感(手足の冷え),頭重感(頭が重い感じ)
では,頭痛や耳鳴りは後遺障害の対象になるのでしょうか?
バレ・リュー症候群の諸症状は,麻酔科,ペインクリニックに通院,
交感神経ブロック療法を続ければ,多くは2か月程度で改善が得られます。
改善が得られるのですから,後遺障害の対象にはならないのが原則になります。
頭部外傷Ⅱ型以上を原因とする頭痛は後遺障害の対象ですが,
バレ・リュー症候群であれば,後遺障害認定の対象から排除されています。
ちなみに,頭部外傷は次のⅠ型からⅣ型の分類が有名です。
Ⅰ型:単純型。神経的症状を全く認めないもの
Ⅱ型:短時間(6時間以内)の意識消失を認めても神経症状を残さないもの
Ⅲ型:脳挫傷型。意識障害が6時間以上続くか脳の器質的損傷のあるもの
Ⅳ型:頭蓋内血腫型。硬膜外血腫。硬膜下血腫
後遺障害のポイント
1)バレ・リューでは,後遺障害が認定されないでしょうか。
交感神経異常を原因とするバレ・リュー症候群の
不定愁訴(ふていしゅうそ=何となく体調が悪いという自覚症状を訴えるが,
検査をしても原因となる病気が見つからない状態)は後遺障害の対象ではありません。
頭痛,眩暈,吐き気で苦しむ方は,整形外科以外にペインクリニックに通院し,
交感神経ブロック療法で症状の改善を目指すことになります。
2)耳鳴りは,条件が揃えば12級相当に値する
①耳鳴り
耳鼻科におけるオージオグラム検査(オージオグラムという機械で行う検査。
ピーとなったらボタンを押す機械です)で30dB(デシベル)以上の難聴を伴い,
ピッチマッチ,ラウドネスバランスの耳鳴り検査(検査装置から発生する音を,
感じている耳鳴りと比較して,その高さ(ピッチ)と大きさ(ラウドネス)を調べる方法)で,
耳鳴りが他覚的に立証されたときは,12級相当が認められています。
30dB(デシベル)というのは,深夜の静かな住宅地でのささやき声くらいの
音と言われています。
バレ・リューでも,耳鳴りを感じることがありますが,難聴を伴うことはなく,
交感神経節ブロック療法で改善が得られます。
②自覚症状の訴えと耳鼻科における検査
通院治療先が整形外科でも,事故直後から耳鳴りの自覚症状を訴えておかなければなりません。
そして,早期に耳鼻科を受診し,オージオグラム検査を受けてください。
症状の訴えがなく2,3か月を経過すると,事故との因果関係はまず否定されます。
3)排尿障害,嗅覚の脱失
この2年間くらいで,中心的な傷病名が外傷性頚部症候群であっても,
排尿障害(はいにょうしょうがい)の症状があり,
尿管カテーテルで強制導尿を実施している被害者に11級10号が認められているようです。
また,嗅覚の脱失で12級相当が認定されています。
排尿障害については,ウロダイナミクス検査で尿道括的筋(尿が漏れないように尿道を閉める役割を果たす筋肉です。この筋肉の働きにより尿を我慢できたりします)
の異常を調べます。
ウロダイナミクス検査は,検査外尿道口からカテーテルを挿入したり,
筋肉の動きをみるために電極を取り付けたりし,
実際の尿や注入した液を出したりする様子を医師や看護師等が診て行います。
嗅覚脱失では,T&Tオルファクトメータ(大雑把にいうと,例えば,バラの臭いとか焦げた臭いとか,嗅覚測定用基準臭があります。徐々に強い臭いをかがせて,
どこではじめて臭いを感じるかを言わせることで,
どの臭いかわかるまで一段一段強くして嗅がせる検査)で,嗅覚の脱失を立証しています。
事故直後から自覚症状の訴えがあり,症状固定まで自覚症状が継続していることが必要です。
自覚症状が立証できていれば,原因は特定できなくとも,
損保料率機構調査事務所は等級を認定しているようです。
聞いた事例ですが,排尿障害では等級認定までに6か月,
嗅覚脱失では,1年間を要したようです。
悩みに悩み抜いて認定してくれたという印象だったということです。
実は,この場で説明できないことがたくさんあります。
後遺障害を確実なものにしたいとお考えの方は,受傷から2か月以内のできるだけ早期に,
MRIのCDを持参して,当事務所にお問い合わせください。
14級9号か,12級13号か,それとも非該当か,
根拠を明らかにして納得できる説明を行います。
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