頭部・顔面打撲と右眼瞼部挫創

頭部・顔面打撲と右眼瞼部挫創

吹き抜け骨折,眼窩底破裂骨折 blowout fracture

 眼窩底は厚みが薄く紙に例えられており,外傷などによって容易に損傷して眼窩の内容物が上顎洞に侵入する,眼球が落ち込んでしまうことも頻繁です。

 眼窩を構成する骨は,頬骨・顎骨・涙骨・篩骨(しこつ)・前頭骨・口蓋骨・蝶形骨の7つで,眼窩の上縁と下縁はそれぞれ前頭骨と上顎骨によって形成されていますが,両者は強度が強いため骨折とはなりにくいのです。一方,眼窩底は厚みが薄く,篩骨は外傷で容易に損傷します。
これを吹き抜け骨折と呼び眼窩内側と眼窩底に生じやすく,眼窩の内容物が上顎洞に侵入します。

 眼窩内の出血が副鼻腔を介して鼻出血を生じることもあり,眼球運動障害,複視,視野障害,眼球陥凹,瞼裂(けんれつ=上下のまぶたの合わせ目)狭小化,眼窩下神経領域の知覚障害を発症します。

 検査は顔面のレントゲンP撮影,内側壁骨折に対してはCTが有効です。
頭部CT所見では,眼球陥凹と内側壁骨折がくっきりと描出することができます。

眼窩底吹き抜け骨折における後遺障害

 後遺障害の対象は眼球運動障害・複視・視野障害・醜状障害として,眼球陥凹・瞼裂狭小化が予想されます。

①眼球の運動障害

 眼球の運動は上下,内外,上下斜めの3対の外眼筋の一定の緊張で維持されています。
外眼筋の一部が麻痺すると,緊張状態が壊れ反対の方向に偏位します。
つまり運動機能障害は,斜視と複視のことです。
斜視は傷病名としては,外転神経麻痺・動眼神経麻痺・滑車神経麻痺になります。
眼球運動障害は,ヘスコオルジメータで立証,眼球の注視野の広さが2分の1以下であれば,両眼で11級1号,1眼で12級1号が認定されています。

②複視には面視での複視,左右上下の複視の2種類があります。

 立証はヘスコオルジメーターを使用し,複像表のパターンで判断されています。
正面視の複視は両眼で見ると高度の頭痛や眩暈が生じるので,日常生活や業務に著しい支障を来すものとして10級2号が認定されています。
左右上下の複視は正面視の複視ほどの大きな支障は考えられないのですが,軽度の頭痛や眼精疲労は認められます。この場合は13級2号が認定されています。

③視野障害はゴールドマン視野計,フリッカー検査で立証します。

 フリッカー検査は,視神経障害の診断に有効な力を発揮します。
フリッカー検査の正常値は40~50c/sです。
検査値が26~34c/sであれば,再検査が必要となります。
前後3回の検査を受け,数値の最も低いものを記載します。
25c/s以下であれば著しい低下となり視野狭窄で後遺障害の認定対象となります。

 両眼に半盲症,視野狭窄または視野変状を残すものは9級3号が,1眼では13級3号が認定されています。ゴールドマン視野計で,正常視野の60%以下になったものを視野狭窄と言います。

 自賠責調査事務所がチェックしているポイントは以下の四点です。

  1. 受傷状況の確認
  2. 残存する眼症状の具体的内容および程度の確認
  3. 受傷状況・症状経過と残存する眼症状との整合性の確認
  4. 残存する眼症状と他覚的検査所見との間の整合性の確認

事例の紹介

 傷病名 右眼窩内側下壁骨折
症状 複視,眼精疲労,頭痛

 事故状況 原付で通勤途上,交差点で乗用車と衝突,跳ね飛ばされ街路樹に激突,眼球を打撲する。画像所見 XP,CTで左眼窩内側下壁の骨折を認める。
全身麻酔下の手術で眼窩内容物を整復,同時に腸骨から骨移植を行う。
後遺障害 ヘスチャートで正面視,左右上下視の複視を認める。
左顔面部には,手術痕と眼窩脂肪の減少を原因とする眼瞼の陥没を認める。

 複視は正面視と左右上下視で複視が立証されており10級2号
醜状痕は,線状痕としては3cm以上で12級15号となりますが,右眼窩部の陥没が醜状障害の7級12号に該当すると判断され,併合6級が認定されました。

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