反復性肩関節脱臼

反復性肩関節脱臼

① 関節の構造

 肩関節は,肩甲骨の浅いソケットに,上腕骨がぶら下がっている構造です。
関節部には,骨の連結がなく,大きな可動域を有している(=たとえば,肩をぐるぐると回すことができる)状況です。
別の面から見れば,関節が外れやすい構造。脱臼しやすい構造ともいえます。

② 反復性肩関節脱臼

 反復性肩関節脱臼とは,一度肩関節を脱臼すると,繰り返し肩関節を脱臼する状態のことをいいます。
肩甲骨面に吸盤の役割をしている2つの関節唇(かんせつしん)という軟骨があります。
靭帯と関節の袋である関節包(かんせつほう)が付着しています。
これが上腕骨頭を覆うことによって肩関節が安定化しています。
脱臼時に関節唇が肩甲骨面から剝離してしまった場合は肩関節が安定しません。
これを治癒しない限り,脱臼を繰り返すことになるのです。
極端な例では,背伸びの運動でも肩関節が外れる状態となります。

③ 反復性肩関節脱臼の治療方法

 関節鏡視下手術を行います。
関節鏡視下手術とは,モニターを見ながら関節内を十分に観察し,剥がれた関節唇を肩甲骨面の元の位置に縫い付けます。
手術による傷はほとんど残らず,入院も2~3泊と短期であり,術後感染のリスクもほとんどないため,近年普及している治療方法です。

反復性肩関節脱臼における後遺障害

① 予想される後遺障害

 反復性肩関節脱臼が認められるとき,肩の機能障害として12級6号が認定されます。
(12級6号 一上肢の 3 大関節中の 1 関節の機能に障害を残すもの)

② 立証方法

 当事務所でも経験があるのですが,後遺障害診断書に,反復性肩関節脱臼と主治医に記載してもらっても自賠責調査事務所はそれを信用してくれません。
反復性肩関節脱臼を立証するためには,XPストレス撮影(関節を曲げて亜脱臼(関節は外れるが圧をとると戻る。) を起こした状態でレントゲンを撮ること)が必要になります。

③ 症状固定前に手術するか否かについて

 上述で述べたとおり,近年,関節鏡視下手術がめざましく発展しており,反復性肩関節脱臼に対しては,関節鏡視下手術を行うことにより,治癒するケースが多くなってきました。
それゆえ,症状固定前に関節鏡視下手術を行うと,反復性肩関節脱臼は治癒し,後遺障害等級は非該当という結果になります。
他方,関節鏡視下手術前に症状固定し,後遺障害等級申請を行うと,反復性肩関節脱臼は治癒していないことから12級6号の後遺障害等級が認められることになります。
そうであれば,関節鏡視下手術前に症状固定を行い,後遺障害等級を確定し,弁護士による損害賠償交渉が完了してから,健康保険適用で治癒を目指すことが経済的には利益のように思います。

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