気管・気管支断裂 (きかん・きかんしだんれつ)

気管は空気を口から肺へ送り込む導管です。
気管の外傷は、少数例ですが、呼吸に関わることであり、重症例では死に至る深刻なものです。

交通事故では、バイクの運転者に多く、頚部に直接外力が加わる、転倒時に
頚部を強く打撲する、急激に頚部が引き伸ばされたときや、自動車であっても、
高速で走行中の衝突事故で、体に大きな外力が作用し、体内で引き千切られるように
断裂すると考えられています。

症状は、血痰や呼吸困難ですが、頚部皮下気腫や縦隔気腫を伴うことが最大の特徴です。
受傷直後から、これらの症状が現れ、進行していくので、
救急搬送を急がなければなりません。

血痰、呼吸困難、頚部皮下気腫が認められると、気管断裂が強く疑われます。
胸部CT、気管支鏡検査により確定診断がなされています。

損傷が軽度であれば、自然に回復することもありますが、中程度以上の単独損傷では、
緊急オペにより、気管断裂部の修復術が実施されます。

多臓器損傷が合併しているときは、気管内挿管や気管切開を行って、
損傷部を越えて気管内チューブを健常部にまで挿入し、換気を確保します。
全身状態が落ち着いてからオペが実施されます。

外傷後の瘢痕を剥がすように、気管断裂部にアプローチするのですが、頚部には、
動静脈や神経、食道が走行しており、当然、専門医の領域です。

頚部気管の完全断裂症例は、救命が非常に困難な外傷であり、
進行性の呼吸困難で窒息の危険があるときは、事故現場で気管切開が実施されることもあります。

 

気管・気管支断裂における後遺障害のポイント

1)滅多に遭遇しませんが、呼吸器内科の医師は、後遺障害の知識と経験則に乏しく、
協力を得るのに、毎回、大変な苦労をしています。

医師に任せておけば、後遺障害が認定される? そんな錯覚はしないことです。

 

2)ケーススタディ(弊所では取り扱いは無く,他事務所でのケースです)
原付バイクを運転中に、2トントラックに追突された交通事故です。

被害者は、左前方にはね飛ばされ、街路樹に激突しました。

傷病名は、多発肋骨骨折、フレイルチェスト、肺挫傷、気管断裂、頚部皮下気腫、
左肩鎖関節脱臼骨折グレードⅢであり、40日の入院を伴う重傷でした。

症状固定段階では、息苦しさ、運動時の息切れ、かすれ声、左肩鎖関節部の変形と
左肩関節の運動障害を確認しています。

スパイロメトリー検査では、%肺活量が60%、1秒率は70%であり、肺が空気を取り入れる容量が
少なくなっていること、弾力性を失っていることで、息苦しさ、息切れを立証しました。

かすれ声=嗄声(させい)については、気管挿管もしくは抜去時に、
声帯に損傷を受けたものと推定されるとのことで、そのことについて、
後遺障害診断書に記載をお願いしました。

左肩鎖関節の脱臼骨折は、MRIでグレードⅢが確認できました。
左肩関節の他動値は、外転が120°内転0°で右に比較して4分の3以下を達成しています。

弁護士による被害者請求の結果、呼吸器の障害は11級10号、かすれ声は12級相当、
左鎖骨の変形で12級5号、左肩関節の運動障害で12級6号、併合10級が認定されました。

交通事故受傷によるかすれ声は、12級相当の後遺障害の認定の可能性があります。

※スパイロメトリー検査
呼吸の呼気量と吸気量を測定し、呼吸の能力を判定しています。

 

※肺活量
空気をいっぱい吸入して、いっぱい吐いたときの量です。
通常、年齢と身長によって計算した予測正常値と比較し、%肺活量として表します。

 

※1秒率
肺活量を測定するときに、最初の1秒間に全体の何%を呼出するかの値です。
肺の弾力性や気道の閉塞の程度を示します。
弾力性がよく、閉塞がないと値は大きくなります。

スパイロメトリー検査 おおよその目安
%肺活量 1秒率 レベル・障害の状態
80以上 70以上 正常
79以下 70以上 拘束性 肺の弾力性低下、胸部拡張障害、呼吸運動の障害
80以上 69以下 閉塞性 気道閉塞、肺気腫
79以下 69以下 上記の2つが混合したもの

 

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